北海道で贅沢に暮らしたい

家づくり,購入したもののレビューなどを,北海道ならではの視点を加えながら発信していきます。

氷点

旭川市には三浦綾子記念文学館があります。
旭川に住むようになり早20年という私ですが,三浦綾子文学は読んだことがなくて。

 

代表作氷点】が昭和21年から始まるように,私にとって三浦綾子さんの作品は
近代
に分類していました。夏目漱石さんとか,芥川龍之介さんとかの仲間です。

 

そして私にとっての近代文学は,
腰を据えて読むもの
と位置づけております。

日本の現代文学は,時代背景や文体についてありのままの自分で接すればよいですが,
国境や宗教とともに,時代を超えるというのは,没入するのにひと手間かかる。
そういう認識です。

前置きが長くなりましたが,「せっかく旭川に住んでいるので」,「正月だし腰を据えて読むか!」のコラボレーションで,今回氷点を手に取ったという経緯です。

 

結論から書きます。

氷点を読んで,よかった。

 

まず,氷点は2022年現在の私にとって現代文学でした。たいへん読みやすい。
学術的なことはチンプンカンプンな私ですが,内容が,時代背景に関わらないヒューマンドラマであることが関係しているのかもしれません。

あらすじは…円満な家庭の小さな娘が殺されるところから始まる物語。
悲しみから立ち直るために,乳児院から子どもを引き取ることにしたが…
父はこっそり,娘を殺した男の子を選んだ。
父の思惑は?母はいつ気づく?妹に恋愛感情を持ってしまった兄?
ページターナーです。

私がお気に入りな点は,
登場人物のラインナップが「いるいる!」で固められていること。

  • 真面目で堅実な開業医,だが妻の不貞を疑うも…「聞けない!意地悪しちゃえ!」なことしちゃった父。
  • 「もっとかまってよ!」「私悪くないもん」何年経ってもお姫様気分な母。
  • おいおいー幼いぞ思春期!な兄。
  • 出生の秘密が二転三転する,健気で応援したくなるヒロイン。
  • その他,困ったときのハカセ役や,たよれるおばちゃん役

作者の三浦綾子さんがクリスチャンであり,テーマは原罪だ,と解説されておりますが(言われてみれば,確かに原罪か…)という程度。
繰り返すようですが,実に人間味の溢れた作品でした。
特に「氷点」の意味するところが顕になったくだりは,胸が熱くなります。

舞台が旭川市なのも,身近に感じられてよかったです。林 民生さんの「糸」や,野田サトルさんの「ゴールデンカムイ」もそうですが,知ってる知ってる!と思いながら読む,勝手に優越感。

なお,続・氷点なる作品がある模様です。本屋には並んでいなかったので,楽天ブックスに頼みました。